令和3年第3回定例会(6月)


本会議

(議案第63号 専決処分の承認)

吉田

  今回の条例の一部改正は地方税法等の一部改正に伴うものだと思いますが、その中で、納税環境整備として、特別徴収税額通知について特別徴収義務者が求めた場合は、市町村はeLTAX地方税ポータルシステム及び特別徴収義務者を経由して電子的に送付するという地方自治法の改正が一部含まれているようです。現在、本市ではそのあたりの整備はどの程度進んでいるのでしょうか。


税務課長

 求めがあれば応じるという形です。


吉田

 求めがあればとは、そのように制度が変更になったことがしっかり周知されていればという前提であると思いますが、周知については国からなされるのでしょうか、それとも本市として行う方向性はあるのでしょうか。


税務課長

 市町村税ですが、全国的なものであり、国において大きく周知しています。


(議案第67号 専決処分の承認)

吉田

 8、9ページの3款3項5目児童措置費18節負担金補助及び交付金の子育て世帯生活支援特別給付金(ひとり親世帯分)について、支給対象の世帯数、また児童数、それから給付済みの割合をお伺いいたします。


こども支援課長

 子育て世帯生活支援特別給付金(ひとり親世帯分)の5,500万円の内容ですが、対象は690世帯、子供の数として1,100人分を予算措置しています。専決処分を行い、現在、支給業務を継続中ですが、5月31日現在、振込件数が491件、3,705万円を振り込んでいるところです。


吉田

 これは児童手当の振込口座がそのまま使えると伺っているのですが、対象世帯が690ある中で振込件数がまだ491とは、どういった要因で給付に至っていない世帯があると捉えているのでしょうか。


こども支援課長

 児童手当というお話ですが、児童扶養手当については支給に当たり市で把握した口座に申請書なしで振り込んでいます。家計急変や公的年金を受給していて児童扶養手当を受けていない世帯については、申請をしていただいて支給する形になっています。支給件数に関しては、今後増えていくのではないかと考えております。


(議会案第3号 東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS等処理水の海洋放出について慎重な対応を求める意見書)

吉田

 意見書の趣旨については賛同できるものだと個人的に思っているのですが、意見書の題名で「慎重な対応を求める意見書」となっています。行政はどんな業務に関しても必ず慎重に対応しているのではないかと思います。慎重な対応を求めるという書き方になると、慎重に対応した結果、海洋放出することになっても仕方がないこととして受け止められてしまうのではないかと思うのですが、なぜこのような題名にしたのでしょうか。


齋 浩美議員

 では、「慎重な対応」について御説明したいと思います。
 この動きについては、本文中に書かれているとおり、令和3年4月13日に関係閣僚会議で決定しましたが、福島県や宮城県の漁業協同組合など関係者に対してほとんど説明がないままに進められたわけです。私も閖上ヨットハーバーを利用している方からお話を聞いたのですが、全然説明がなく、勝手にお上が決めた、現場の話も知らないで本当に合意も何もないままに決まっていると怒り心頭の声がありました。平成27年8月に、福島県漁業協同組合連合会が出した海に流さないでほしいという要望書に対して、関係者の理解なしにはいかなる処分も行わず、敷地内のタンクに貯蔵すると約束していたものを今回破棄したような形で、ほとんど慎重な対応が取られていないと私は理解しています。そのため、質疑にありましたが、慎重な対応をしているかというと、あくまでも政府側がそう思っているだけであって、住民や閖上ヨットハーバーの利用者などから見ると全然慎重ではないというところで「慎重な対応を求める」という言葉を入れました。


吉田

 今の提案者の御答弁からも、慎重な対応というよりも、そもそも海洋放出を認められないという立場にあると思うのです。それは記の1番を見れば一目瞭然です。慎重な対応を求めるというタイトルにすれば、慎重な対応を求めるという点に関してはどの議員も同じ意見だと思います。しかし、慎重な対応の結果、海洋放出をするのかしないのかと分かれたときに、そこはそれぞれの立場があると思います。ですから、誰でも賛成できるような書き方ではなく、やはり目的を明示して分かりやすい意見書のタイトルにすべきではないか、ここにはっきりと海洋放出に反対すると書くべきではないかと思います。なぜそうしなかったのか、もう一度お伺いしたいと思います。


齋 浩美議員

 一言で言うと、非常に簡単だと思います。見解の相違です。捉え方は100人いれば100人違うというところもあります。そして、「慎重な対応」として強烈に反対と言っているわけではありませんが、大多数の声を集めたいという思いが私の中ではあります。今回、声を伺ったところ、漁業者の中でも仕方がないという言い方をする方もいましたし、もちろん反対だという方もいました。福島県内の意見書などを調べたのですが、やはり慎重な対応を取るということで合意しています。先行している七ヶ浜町の意見書についても、反対ではなく慎重な対応を求めるということで合意を取ったという話を伺ってきましたので、「慎重な対応」という言葉の中で一人でも多くの議員の皆さんに賛同いただけるように、このようなタイトルにしたことを理解していただければと思います。


一般質問

吉田

  10番吉田 良です。ただいま議長から発言のお許しをいただきましたので、事前の通告に従って一般質問を行います。
 初めに、大項目1 地域防災力の向上についてお伺いいたします。
 第99代内閣総理大臣の菅 義偉氏が就任時に表明した自助・共助・公助という理念が話題になりました。この理念は彼が自民党総裁選のときから掲げていたものですが、そのとおりで当たり前のことだと評価する意見がある一方、自助が最初に来るのは政府の役割を放棄しているようなものだという批判の声もあるようです。誰もがいつ社会的弱者の側に置かれてもおかしくない、明日を見通せないような激動の時代である現在、人生の全てに自己責任を当てはめ、もし挫折や失敗をしたら自助努力が足りないと言って突き放すのは誤りです。しかし、共助や公助は天から降ってくるものではなく、何もしなくても秩序や安定がもたらされるわけではありません。私たち個々人が受動的ではなく主体的に行動することによって、共助や公助の仕組みを構築していかなければならないわけです。とりわけ自然災害への対策を考える場合、こうした視点から議論することが重要です。
 先日、私の町内会に避難行動要支援者の名簿提供について、社会福祉課から職員が説明においでになりました。その際に役員に配付された資料にはこう書かれていました。「災害を止めることはできないので、災害が来ることを前提として、どうしたら被害を少なくできるのかを考え、取り組むのが減災です。減災を考える上でポイントになるのは、自助・共助・公助の連携です」。そして、自助には「自分のことは自分で守る」、共助には「地域においてお互いに助け合う。特に災害直後は地域におけるお互いの助け合いがとても大事」、公助には「行政機関が市民等の安全を確保する。大規模災害のときは数日たってから行政機関が機能していくことが多い」と説明が付されておりました。簡潔明瞭にまとめられていましたので、引用させていただきました。御了承ください。
 ここに書かれているように、災害が発生した際、個人と行政との間にある地域コミュニティーの活動が被害をより小さく抑えるための鍵となります。そのことを多くの国民に認識させたのが平成7年に発生した阪神・淡路大震災でした。それ以前は、防災は行政の仕事と捉えるのが普通でした。しかし、大規模な災害が発生すると、公的な防災関係機関の活動能力は著しく低下してしまいます。実際に阪神・淡路大震災では、家屋の倒壊による生き埋めや建物などに閉じ込められた人のうち、消防などの公的機関に助けられたのは僅か1.7%で、約95%は自力または家族や隣人に救助されたというデータがあります。こうしたこともあって、阪神・淡路大震災を機に自主防災組織の設立が全国で進みました。
 令和2年9月、令和元年度決算の審査で、本市における自主防災組織の数は146町内会等のうち115との答弁がありました。それぞれの自主防災組織は、防災訓練や避難行動要支援者の把握など、いざというときに備えて地道に活動を行っています。宮城県には4,500を超える自主防災組織が結成されており、県当局も様々な自主防災活動の支援に取り組んでおります。県は、平成29年度から4年間にわたり自主防災組織育成・活性化支援モデル事業を実施し、令和3年3月、自主防災活動の中で得られたたくさんのアイデアをテーマ別に分類、整理した「みやぎ地域防災のアイディア集」を発行しました。このことを知って、本市の自主防災組織の活動が幾つ紹介されているのか、わくわくして目次を見たのですが、本市の事例は一つも取り上げられていませんでした。
 そこで、小項目1 宮城県が今年3月に発行した「みやぎ地域防災のアイディア集」は、県内13市町における自主防災組織による80の活動事例を紹介しているが、本市はモデル地区に指定されず、市内での取組は紹介されていない。このことに対する所感を市長にお伺いいたします。


市長

 令和3年3月に発行された「みやぎ地域防災のアイディア集」については、宮城県と東北大学災害科学国際研究所が連携し、自主防災組織育成・活性化支援モデル事業として様々な自主防災活動の支援に取り組んだ事例や活動の中で得られたたくさんのアイデアが詰まっているものであると承知しております。
 当該事業については、平成28年から30年の間に県から各市町村へ事業活用の意向調査が行われましたが、当市といたしましては、既に独自の支援事業へ取り組んでいたところで、成果を上げていたことから、その取組を優先し、当該事業の活用は行いませんでした。
 本アイデア集は自主防災組織のさらなる活性化や新たな自主防災組織結成の一助になるものと理解しておりますので、今後、機会を捉え、市内の自主防災組織等に広く周知を図ってまいりたいと考えております。


吉田

 ここに実物がありまして、地図が載っているのです。県北で参加している自治体は、沿岸部では気仙沼市、東松島市などがありますし、特に南部の参加自治体が多いです。沿岸部を南側から見ていくと、山元町、亘理町、岩沼市とあり、1つ飛んで仙台市が参加しています。一目瞭然、名取市が地図上で真っ白になって、何も取り組んでいないかのように見られてしまい、これは非常に残念なことではないかと思います。東日本大震災の津波で約900名もの命が失われたこの名取市が、自主防災組織の活動が低調であると何も知らない方からは思われかねません。私は自主防災組織の活動を共に行っている仲間をはじめとして住民に対して非常に申し訳ないと思うのですが、本市が参加しないことを最終的に判断したのはやはり市長ということでよろしいのですか。


総務部長

 当時、県の事業に対して手を挙げなかったことについては担当課の判断であると捉えております。その理由については、何も取り組んでいないということではなく、市長が答弁申し上げましたとおり、その当時、既に本市といたしましては独自の支援事業に取り組んでおり、成果を上げていましたので、その取組を引き続き優先させてきたということです。


吉田

 恐らく取組はどの自治体でもそれぞれ行っていますので、県から事業が示された際に参加するかしないかは、やはり自治体のやる気の問題だと思うのです。
 当時のことは分かりましたが、県は、自主防災組織育成・活性化支援モデル事業の後継的な事業として、令和3年度は防災実践力向上等支援事業を行っています。これは、今年の2月から3月頃に各市町村に参加の意向を確認したところ、気仙沼市、女川町、亘理町、角田市の4市町が参加することになったと伺いました。このうち女川町と角田市は前の事業には参加していない新規の自治体ですが、なぜ本市は新しい後継的な事業にも参加しなかったのでしょうか。


市長

 国や県の様々なメニューがあり、いろいろな事業が提案されている中で、全て行うわけにいきませんから、どれを選んでどのように進めていくかはその自治体の判断であろうと思っております。御存じのとおり、防災に関する取組を本市が全く行っていないということではありませんので、取組の内容について再度精査をしながら、市民の方にも理解を得られるようにしていきたいと思います。


吉田

 様々なメニューがある中で自主防災組織の事業を選ばなかったというのは、それだけ優先順位が低いと見られますから、今の御答弁は私はいかがなものかということで納得できません。
 そして、みやぎ地域防災のアイディア集については先日河北新報も取り上げ、各自治体に5部ずつ配付されたと記事で知りました。担当課に伺っても、その5部がどこにあるのかよく説明がなされなかったのですが、県に本市として要請して、現在、本市で印刷できるように県からデータを預かっていると県の担当から伺いましたが、それを何部印刷して、これからどのように活用しようと考えているのかお伺いいたします。


防災安全課長

 みやぎ地域防災のアイディア集は5部頂いております。データも頂いておりまして、カラー印刷をして、例えば各公民館、図書館にお配りしたいと考えています。また、出前講座や防災指導員講習の際に周知を行いたいと思っております。


吉田

 著作権使用料が取られるものではないと思いますので、十分有効に活用していただきたいと思います。
  次に移ります。市当局と自主防災組織の連携についてです。
 本市が当該事業に参加しなかった理由の一つとして、私は自主防災組織の現状を適切に把握できていないことがあるのではないかと推測しております。各自主防災組織は、防災訓練やコミュニティー活動などを通し、地域にどのような住民がいるのか把握に努めています。市当局としても、各自主防災組織がどのような活動を行っているのか把握に努め、災害に即応できるように連携を強化する必要があると思います。
 そこで、小項目2 市内自主防災組織の活動に関する情報の収集に努めるとともに、市外自主防災組織による活動事例を紹介するなどの機会を通じて、連携を強化すべきと考えますが、市長の御見解をお伺いいたします。


市長

 市内自主防災組織の活動に関する情報の収集に関しましては、各地区で開催される防災訓練に市職員が参加したときのほか、防災資機材購入費等補助金の活用後3年間は活動実績報告書を提出いただくこととしているなど、機会を捉えて活動状況の把握に努めているところです。
 今後もこれらの取組を継続していくとともに、市外の先進的な活動事例の情報を収集し、出前講座や防災指導員養成講習などの場を活用して、収集した活動事例などを積極的に紹介、提供しながら、情報共有を図り連携強化につなげてまいりたいと考えております。


吉田

 市長御自身の自主防災組織に対する関心がどのぐらいのものか、私は直接聞いてみたいと思うのです。例えば市長が催すいろいろなイベントなどがありますが、平成29年度から市長ランチミーティングが行われ、これまで18回の開催実績があります。このコロナ禍で中断しているようですが、この18回中、自主防災組織などの防災活動に携わる団体の参加はゼロです。そして、これは団体側から申し込むだけではなく、市長側から選ばれた団体に呼びかけるケースもあると伺っていますので、なぜそれらの団体に呼びかけないのか不思議です。同じく、市長移動懇談会も、3回のうち防災関連の団体はゼロです。もし自主防災組織の活動に関心があればこうした結果にはならないのではないかと思うのですが、市長は強い関心をお持ちであることをどのように御説明されるのでしょうか。


市長

 ランチミーティングでたまたま自主防災組織の方がいなかったということで、防災に関して私が関心が薄いのではないかという御指摘は私は当たらないと思っております。例えば、先ほど御紹介した防災指導員の養成講習、また防災指導員のフォローアップ研修などは、各地区で非常に関心が高く、実際に活動している方々が集まる会であり、そのような会には努めて毎回なるべく参加するようにしているところです。それから、総合防災訓練、職員に向けた避難所運営訓練にももちろん参加するようにしており、その内容についても、毎年、今年らしさ、新しさ、名取らしさ、関係機関との連携、こういったものを取り入れるように指導もしておりまして、議員御指摘の内容をもって私がそういったことに対する関心が薄いというのは正直受け入れられないというところです。


吉田

 関心が薄いとまでは私は一言も言っていません。関心がどのぐらい高いのか確認させていただいただけですから、御承知おきいただきたいと思います。
 自主防災組織は一定の期間ごとに会長以下の幹部が交代するわけですが、幹部の名前や連絡先などの最新の情報はどのようにして把握しているのでしょうか。


防災安全課長

 各組織においては、設立当初の会長から順次交代していると思いますが、市において連絡を取って、どなたになったか確認を取っているところです。


吉田

 はっきり分からないのですが、市から百十何団体全部に対して誰に替わったのかどのタイミングでお聞きしているのですか。


防災安全課長

 防災指導員養成講習会あるいはフォローアップ講習会の開催について各自主防災組織に通知する際などに確認を取っております。


吉田

 替わった場合、団体の新しい役員の名前や連絡先は全部把握できていると捉えてよろしいのですか。


防災安全課長

 代表のみしか捉えておりません。


吉田

 代表はもちろんですが、例えば、通知を出した際に全部返事が返ってきて、全てを更新して、市のデータとして今日現在の自主防災組織の会長名と連絡先が全部把握できているという理解でよろしいのでしょうか。


防災安全課長

 把握していると捉えております。


吉田

 年度途中で替わることもあると思いますので、情報収集の方法はもう少し丁寧にこれから考えていかなければならないと思いました。
  それでは、次に移ります。自主防災組織連絡協議会設立への取組についてです。
 結成されている自主防災組織相互の協力体制を構築し、情報交換により防災活動の活性化を図ることを目的とするのが自主防災組織連絡協議会です。本市議会の議事録を遡って確認したところ、本市における自主防災組織連絡協議会の設立は平成24年度から促進され始めたようです。平成24年度に那智が丘地区で初めて設立され、平成26年度に相互台地区と愛島地区、平成27年度に下増田地区に設立されたように読み取れました。多少の誤差はあるかもしれません。
 その後、現在に至るまでこの4地区のままで、それ以外の地区での設立が課題となっていることは事実です。令和3年度当初予算に対する総括質疑で、市長は「自主防災組織連絡協議会の設立に向けた取組につきましては、出前講座による防災講話や地区で開催する防災訓練などの防災行事に出向き、機会を捉えてその重要性について周知、啓発を図るとともに、組織の設立に向け引き続き取り組んでまいります」と答弁されております。
 ここで改めてお伺いいたします。小項目3 自主防災組織連絡協議会の新たな設立に向けた取組の内容と経過を市長にお伺いいたします。


市長

 自主防災組織連絡協議会の新たな設立については、出前講座による防災講座や各地区で開催される防災訓練に市職員が参加したときなど、機会を捉えてその重要性について周知、啓発を行っており、それにより設立にこぎ着けた地区も複数ありました。一方、設立について検討したものの、地区内の合意形成が難しく設立に至らない地区も複数ありました。
 市といたしましては、今後も自主防災組織連絡協議会の重要性について丁寧に周知してまいりたいと考えております。


吉田

 過去に、地域の実情に応じた防災マニュアルの作成の事業に合わせて、地域の防災体制についてのワークショップが開催されたことがあるようでした。このコロナ禍で難しさもありますが、今も防災マニュアルの更新を進めていますので、そうした取組を行いながら自主防災組織連絡協議会の設立を強く呼びかけていくお考えはないのでしょうか。


市長

 御存じのとおり令和2年から4年にかけて各地区の防災マニュアルの更新を進めていますので、その際には、これまでもそうでしたが、地区の声を聞き、またワークショップ等を開催して、自主防災組織連絡協議会の必要性について十分認識していただきながら進めていければと思っております。


吉田

 次の質問に関連するのですが、自主防災組織連絡協議会を設立済みの4団体のうち愛島を除く3団体には、町内会の連合組織があると伺っています。市内には、町内会の連合組織はほかに増田、増田西、高舘熊野堂、ゆりが丘・みどり台の4つの地区で設立済みということですが、これまで自主防災組織連絡協議会の設立まで至らなかったものの検討を行った地区にはこれら以外の地区も含まれているのでしょうか。


防災安全課長

 設立に至らなかったのは2地区で、令和2年度は新型コロナウイルス感染症の影響から町内会等との接触ができない状況でしたが、令和元年度において増田地区と名取が丘地区で啓発を行いました。増田地区については、意欲的な単位地区になりますが、啓発に伺った時期が新型コロナウイルスの感染拡大の直前であり、その後の接触機会が得られず、現在設立に至っていない状況です。名取が丘地区についても、意欲的な単位地区がありましたが、町内会の役員改選により設立に向けた動きが中断し、また、高齢化により担い手が不足し、自主防災組織連絡協議会設立以前に自主防災組織自体の存続に影響が出てきて、それらの複合的な理由により現在設立に至っていない状況です。


吉田

 いろいろな事情がある中で新型コロナウイルス感染症というまた大変な疫病が発生してしまったということで、非常に難しいことは理解しています。
  そこで、次の質問に移りたいと思いますが、自主防災組織連絡協議会の設立の考え方をお伺いしたいと思います。
 小項目4 大半の自主防災組織は町内会を母体とすることから、自主防災組織連絡協議会の新たな設立は、町内会の連合組織の設立と、連合組織との関係構築を前提とすべきではないかと思います。市長の御見解をお伺いいたします。


市長

 町内会は任意の組織であり、その集まりである連合組織もあくまで任意による組織ですので、市がその設立を主導することはできないものと考えております。
 しかしながら、これまで町内会の連合組織等が既に設立されている地区について、自主防災組織連絡協議会の設立に向けた働きかけを行ってきた経緯がありますので、今後もそういった地区に対し、引き続き設立に向けて働きかけを行ってまいりたいと考えております。


吉田

 答弁の前段と後段が私の中でつながらないのです。もちろん町内会に連合組織をつくってくださいとか市がつくりますとは言えないのですが、ただ、連絡協議会の立ち上げが非常に難しい状況であれば、もっと別な後方支援の方法があるかと思うのです。町内会の連合組織がない地区で自主防災組織連絡協議会の設立を目指す場合は、どのような手順で進めることで可能になると捉えているのでしょうか。


市長

 まず、地区の単位組織がそれぞれ自主防災組織の単位組織を結成していただいて、それが全地区となる、もしくはそれに向かっている状況であれば、連絡協議会という形になるかと思います。まずはそれぞれの一番身近な地域の中において自主防災組織を立ち上げることが第一義的であり、それをより強固なものとするために自主防災組織連絡協議会にさらに進めていきたい、そういう順番だと思っています。


吉田

 もちろん今の順番なのです。最初に連絡協議会ができて、その後に支部ができるという逆の順番になることはないと思いますが、その順番に持っていくためにどのように進めるのか、もう少し具体的に示していただきたいのです。


市長

 非常に地道な話合い、働きかけの積み重ね、そしてまた地域の事情、地域というよりは個人個人の考え方なども大いに反映される事情で、そこに高齢化やコロナ禍が絡まって複雑な様相になっていますが、市としては、とにかく地域で地域を支える自主防災組織のような体制づくりが必要だと思っていますので、地道に働きかけを行っていきたいと思っております。


吉田

 高齢化等いろいろな課題がある中で、例えば先ほど紹介しましたが、町内会で避難行動要支援者の名簿を預かってほしいなど、本当に町内会は、ただの任意団体としては手に余るぐらいいろいろなことを、市から行わされているというよりも、行政に対して行ってあげているのです。避難行動要支援者は社会福祉課の担当ですし、対応する自主防災組織は防災安全課の所管と、自主防災に関わるいろいろな組織が本市ではばらばらに置かれているのですが、実際に大災害が起きた際に自主防災組織と市との連携はしっかり取れると考えられるのですか。


市長

 災害が発生した際は防災安全課が主管になりますが、様々な対応の全てを防災安全課だけで行うことはできないために、災害対策本部として全庁的に取り組んでいくようになります。自主防災組織に対しては当然防災安全課のほうで連携を密にしながら、その他のことについて全市的、全庁的に支えながら、災害対策本部でいろいろなことに当たっていくことになると思います。


吉田

  次に移ります。消防と自主防災組織との連携についてです。
 小項目5 消防と自主防災組織、また自主防災組織間の連携をどのように推進しているのか、市長と消防長にお伺いいたします。


市長

 市といたしましては、マナビィ出前講座及び町内会等の依頼により消防職員を派遣して自主防災組織の訓練指導及び防災講話を実施しております。
 自主防災組織間の連携については、自主防災組織連絡協議会が設立されている地区においては連携が図られているものと捉えていますが、自主防災組織連絡協議会がいまだ設立されていない地区に関しましては、今後、出前講座や防災指導員養成講習などの機会に、自主防災組織連絡協議会の必要性、重要性について丁寧に説明し、その設立に向けて引き続き周知、啓発に取り組んでまいりたいと考えております。


消防長

 消防本部としましては、マナビィ出前講座及び町内会等の依頼により自主防災組織の訓練指導及び防災講話を実施しております。
 内容としましては、防災に関する知識の習得及び災害発生時における初期消火、応急手当て、炊き出し等の活動について、地域住民へ防災に関する意識の高揚及び連携が図られるよう取り組んでおります。


吉田

 今の内容だけではなく、消防には消防団が地域ごとに設置されていますので、消防団の活用も含めてお二人に再度お伺いします。地域防災力の向上の面で、地区によって既に消防団と自主防災組織の連携が取れていたり、あるいは弱いということで違いがあると思います。ただ、やはり消防団と自主防災組織、互いの顔が分かる関係となるような交流活動が必要ではないかと思うのですが、そのあたりの御見解、御認識をお伺いしたいと思います。


市長

 消防団がある地域では、自主防災組織と消防団の連携は同じ地域の中で取れているのだろうと思います。ただ、一朝有事の際は消防団の団員は消防団としての活動に優先して従事することになると思いますので、自主防災組織の中で消防団の方が中心的な役割というよりは、どちらかというと顧問的な関わりになるのではないかと思っています。
 ただ、問題は、やはり消防団そのものが今定員に対して大きく不足しており、地域によって大きなばらつきがある状況で、加えて自主防災組織についても地域的なばらつきがある中で、市内できる限り均一に、自分たちで地域を守る、そしてそこに公助が入るといった連携をどのように図るかということは大きな課題であると思っております。


消防長

 自主防災組織と消防団の連携については、消防団は地域の実情に十分精通していると認識しており、要援護者、要支援者の救護、そして初期消火、応急手当て、また、資機材を用いて訓練を実施し、自主防災組織との連携を図っていますが、やはり大規模災害が発生した場合は、消防本部と同様に消防団本部を立ち上げて、地区の活動というよりも市内全域、広域的な活動を行いますので、具体的に地域の自主防災組織と連携することは大規模災害時は難しいと捉えております。したがって、平常時から自主防災訓練等で連携を図る取組を進めていきたいと考えております。


吉田

 大規模災害の際は消防長のおっしゃることはそのとおりだと思いますが、地域の中での交流活動がもっと必要ではないかと私は捉えております。市長もそこは連携が取れていると思われるとおっしゃいましたが、本当に取れているかどうか、実情についてはもう少し詳しく地域ごとに調査をかけるなどしたほうがいいのではないかと思います。
  それでは、次の質問に移ります。地域防災力向上への方策についてです。
 人口減少と高齢化、第1次産業従事者の減少、被用者の増加などに伴い、平日昼間に青年、壮年、中年の層が地域外に流出しているため、これまで消防団を支えていた年齢層から入団者を確保することが難しくなってきています。地域防災力の要としての消防団の強化をどのように図っていくのか、そのための新たな担い手をどのように確保するかが重要な課題となっております。ただ、近年は火災の発生件数が減少し、消防団の火災出動も少なくなっています。本市における近年10年間における火災発生件数は、東日本大震災があった平成23年が最多で51件で、その後、減少傾向にあり、平成30年は最少の15件、最新の令和元年は21件でした。消防団の火災出動件数も同様の傾向にあり、平成23年が最多で16件、平成30年は3件、最新の令和元年は6件です。
 これは全国の消防団の出動件数についても同じ傾向で、平成22年から10年間で火災が約2割減少しているのに対して、風水害等が2.5倍に増加しています。風水害など自然災害の際に消防団と自主防災組織が連携できれば、避難の支援や減災のための対策がよりスムーズに進むのではないかと思います。自主防災組織は消防長または消防署長の所轄の下に行動するものではありませんが、いざというときに協力を要請できる関係を築いておくことは必要ではないかと思います。そのような関係づくりを続けながら、消防団の団員不足の問題なども一緒に議論していくのがよいのではないでしょうか。
 そこで、小項目6 地域防災力の向上をテーマとするワークショップを開催し、消防団への加入促進や消防と自主防災組織また自主防災組織間の連携強化についてアイデアを募るべきと考えますが、市長と消防長の御見解をお伺いいたします。


市長

 令和2年度において閖上地区及び下増田地区の防災マニュアルを作成した際には、ワークショップを開催し、地域の自主防災組織や消防団の方々にも御参加いただき、地域防災力の向上に向けた活発な意見をいただいているところです。
 今後についても、令和3年度及び4年度に他の地区の防災マニュアルを作成する予定ですので、消防と自主防災組織、また自主防災組織間の連携に関する意見交換を行い、関係機関の連携強化が図れるよう検討してまいりたいと考えております。


消防長

 消防本部としましては、現在のところ、地域防災力の向上をテーマとするワークショップを開催する予定はありませんが、防災訓練の指導や防災講話に消防職員が出向した際、参加した住民に対し、今後も消防団への加入促進や消防と自主防災組織等の連携強化について、継続して取り組んでまいりたいと考えております。


吉田

 地域によっては行われているということで、その取組は評価したいと思います。それをさらに広げて、全市的な形で市内全体の防災を考えるに当たって、自主防災組織と消防団を一緒に巻き込んでいくことができたら理想的ではないかと思うのですが、そのあたりの考え方を市長に最後にお伺いしておきたいと思います。


市長

 テーマによると思います。基本的には自分たちの地域の中である程度完結するような形になるので、テーマによっては、それを全市的に広げたときに内容が少し薄まってしまう可能性があるのではないか。ただ、全市的に共通するテーマを何か設けて話合いを行うことは可能性としてはあるかと思っております。


吉田

  大項目2 障がい児保育事業の対象の拡大についてお伺いいたします。
 本市の障がい児保育事業は、おおむね3歳以上の心身に障がいを持つ幼児で、障害児保育指導委員会において集団保育が可能と認定された者を対象としています。障害児保育指導委員会は、障がい児保育事業の適正な実施を図るため、こども支援課に置かれており、行動観察記録、総合評価等を参考として、当該障がい児について健常児との集団保育を行うことの適否を審議します。直近の審議結果は、平成30年度が審議件数28件のうち28件が適、令和元年度が38件のうち38件が適、令和2年度が42件のうち40件が適、2件が否でした。これらの数字から、障がい児保育事業の利用希望者が増加傾向にあることと、受入れが難しいケースが生じていることが読み取れます。
 そして、この数字には表れていませんが、障害児保育指導委員会に諮られることさえない3歳未満の障がい児もおります。保護者が家庭で保育をしたいと思っても、コロナ禍で収入が減少している世帯など、両親とも働かざるを得ないというケースも出てきています。そのような方から保育所の利用を希望する相談があった場合、本市はどのように対応しているのか、まずは確認をさせていただきたいと思います。
 小項目1 心身に障害を持つ3歳未満の幼児について、保護者が保育所の利用を希望する場合、どのように相談に応じているのか、市長にお伺いいたします。


市長

 心身に障がいを持つ3歳未満の幼児を抱える保護者が保育所の利用を希望する場合の相談については、こども支援課において対応させていただいております。
 入所調整については、心身に障がいを持つ3歳未満の幼児に限らず全ての保育所入所申込者に対し、保育の必要性があるか、また、集団保育になじむかどうかを確認し、保育施設との受入れ協議を経て、受入れ可となった方に対し入所決定の御案内を行っています。
 障がいを持つ幼児の申込みの場合は、年齢にかかわらず、特に障害の程度や状況が集団保育になじむかどうかを重点的に確認させていただいておりますが、確認結果を踏まえ、入所の可否について判断しているところです。


吉田

 市長の御答弁からは、3歳未満の障がいを持つお子さんでも集団保育が可能となれば受け入れると捉えられるのですが、その認識でよろしいのですか。


こども支援課長

 3歳未満でも受入れが可能と判断された場合は受け入れている状況です。


吉田

 これまでの調査の中でそのような話はなかったので今驚いているのですが、私は受け入れられないということで相談を受けたのですが、恐らく年齢というよりもしかすると障害の程度に関わっているのかもしれません。障害を持っているという一つのハンデがあり、そしてもう一つが3歳未満という非常に小さいお子さんのケースです。障がいを持っていても3歳以上だったら受入れが可能、逆に障がいのない3歳未満のお子さんは受入れが可能であっても、2つの要因を持っているために受入れができないのは非常に残念だと思っていたのです。それは、障害の程度によってこども支援課の相談窓口の段階でもう無理だとしているのですか、それとも重度と思われたとしても障害児保育指導委員会にかけているのでしょうか。


こども支援課長

 相談の在り方についての御質問と捉えて答弁させていただきます。
 相談については、まず市内の保育施設の障がい児の保育の状況を中心に説明しております。今まで受け入れたことがないような障がいをお持ちのお子様の場合は、障害の度合いや状況をお聞きしながらそのような説明をした中での相談となり、入所を断念するケースもあります。


吉田

 3歳未満の障がいを持つお子さんの受入れが実際にあるような流れで答弁されていますが、私が以前に聞いた話とは食い違っているので、ここで確認させていただきたいのですが、先ほど平成30年度以降の審議件数を紹介しましたが、その中で3歳未満のお子さんが適とされたケースはどのぐらい入っているのですか。


こども支援課長

 3歳未満の障がいをお持ちのお子様の入所ということで答弁いたしますが、障害児保育指導委員会に諮るいとまがなく対応したケースで、おおむね2歳になりますが、入所している状況です。


吉田

 取扱要綱には障害児保育指導委員会にかけることが規定されていると思いますが、今の答弁では、障害児保育指導委員会にかけることなく、こども支援課で受入れを可能と判断したということですが、それは問題ないのですか。もう1回確認します。


こども支援課長

 整理してお話ししますと、障害児保育指導委員会を通じて受入れの可否について判断するのが大原則です。どうしても障害児保育指導委員会に諮るいとまがないといった場合は、現場の声をお聞きし、なおかつ、健康の状況について申告書、また主治医の診断書等で確認して、入所が可能かどうか判断することもあります。


吉田

 それ自体は悪いことではないと思います。どんどん受け入れていただくのは市民にとってありがたいのですが、事前に確認した数字が正確な数字と言えなくなるので、そのような説明が今唐突に出てくるのは、私もどう対応していいのか、この先の質問が無事に終わるのかどうか非常に心もとなくなってしまったのですが、ただ、障がい児保育事業が原則としてはおおむね3歳以上となっていることは間違いないという理解でよろしいのですね。


こども支援課長

 そのとおりです。


吉田

  そこを踏まえて次に移ります。3歳未満の障がい児の保育の検討についてです。
 小項目2 第2期名取市子ども・子育て支援事業計画には障がい児保育事業として「3歳児未満の保育についても検討する」とあり、重点施策にも挙げられているが、いつまでに、どのような方向性で結論を導く考えか、市長にお伺いいたします。


市長

 議員御案内のとおり、令和2年度から令和6年度までの5年間を計画期間とした第2期名取市子ども・子育て支援事業計画に、障がい児保育事業における3歳児未満の保育の検討を重点施策として掲げているところです。
 どのような方向性で結論を導くのかというお尋ねですが、現在検討中であるためお示しできる段階にはありません。計画期間内に検討を行い、しかるべき対応を講じてまいりたいと考えております。


吉田

 このことを令和2年度から要望しておりまして、令和3年度に入ってからの情報によると、公立の保育所長連絡会議の中で情報交換が行われていると伺っているのですが、今のところ、この会議は議事録が残されずに進められているようです。こうしたことはただの意見交換にとどまらずに、議事録をきちんと残して今後につなげていただきたいと思いますが、市長はどのようにお考えですか。


市長

 熟度によると思います。本当に単なる導入の意見交換もあるでしょうし、基本的には記録に残して透明性を確保した上で進めることがそれこそ原則であると思いますが、逆に言えば、より自由に意見を出していただくといった点からすれば、そうしたことにとらわれずに行うことも手法としてはあるかと思っております。


吉田

 先ほどはまだ検討中であって時期的なものは示せないという御答弁でしたが、期限を明らかにできないのは残念だと思います。そして、動きが見えることによって、今後お子さんをどうするか、家庭で計画、設計できることにつながりますので、できるだけいつまでに結論を導くのか示すことが重要だと思います。
 県の取組を紹介したいと思いますが、宮城県聴覚支援学校は昭和37年4月に幼稚部が設置され、3歳以上ですが、幼稚園の年代の児童の入学が可能になりました。さらに、令和4年4月から、今度は目の不自由な方の視覚支援学校にも新しく幼稚部が開設されることが決まっています。どのような経過で決まったかというと、視覚支援学校は建物の老朽化が激しくなり改築が課題になっていて、保護者から改築をきっかけとした幼稚部の設置を求める声が上がったそうです。それが平成30年頃の話で、翌年の令和元年度には幼稚部の設置についての計画が始められました。そして、令和4年の4月には仮設の校舎が完成して、まずはその仮設校舎に幼稚部を設置することが決まったそうで、県の対応について非常にスピード感があると印象を持ちました。
 本市としても、遅くとも今年度中に、いつまでに障がい児保育事業として3歳児未満の受入れをするのかはっきりさせていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。


市長

 子ども・子育てに限らず、全ての事業においてできる限りスピード感を持って取り組んでいきたいと思っております。一方で、今回の計画については令和6年度までの間に取り組んでいくことを決めていますので、先ほど申し上げたとおり、計画期間の中でできるだけ早く結論を導けるように頑張っていきたいと思っております。


吉田

 できるだけ早く頑張りたいということですので、そのように進めていただければと思います。
  それでは、次に移ります。受入れ環境の整備についてです。
 仙台市では、障がいのあるお子さん、医療的ケアを必要とするお子さん、行動面等で配慮が必要なお子さんなど、保育の提供に当たって一定の特別な支援が必要なお子さんが保育施設で他の子供たちとの生活を通して共に成長できるよう、プラス支援保育を実施しています。年齢は入所希望月の1日時点で生後5か月以上とされており、本市の原則3歳以上より早い段階で受入れが可能です。本市に住んでいて心身に障がいを持つ3歳未満のお子さんがいる場合、何らかの事情で家庭での保育ができなくなればそこで行き詰ってしまいます。しかし、仙台市のプラス支援保育で保育が適と認められれば、本市から仙台市に移住して保育を受けることも有力な選択肢になります。ただ、そのような理由で本市を離れるとすれば非常に悲しいことではないかと思います。
 そして、保育所の職員の皆さんも、決してそのようなお子さんを見捨ててよいと思っているわけがありません。しかし、子供を預かることは命を預かることでもありますので、全てのお子さんの安全を確保するために、人員の配置や施設の整備などの受入れ環境を充実しなければならない、これが今の課題だと思います。
 そこで、小項目3 心身に障害を持つ3歳未満の幼児の集団保育について、保育の現場からの意見を取り入れて、受入れの環境を整備すべきと考えますが、市長の御見解をお伺いいたします。


市長

 先ほどの答弁でも触れましたとおり、障がい児保育事業における3歳未満の保育については、現在検討を行っているところです。
 議員御指摘のとおり、今後検討を進めていく過程では、実際に3歳未満の障がい児の受入れを行う保育現場からの意見を取り入れていくことが重要であると捉えていますので、そのような機会を設けながら、受入れの環境整備等についても検討を重ねてまいりたいと考えております。


吉田

 実際に検討を進める中でいろいろな意見が出てくると思いますが、3歳未満の障がい児保育を受け入れられない現状の課題は主にどのようなところにあると捉えているか、お伺いいたします。


こども支援課長

 議員から御指摘がありましたとおり、今後、3歳未満児の保育の充実については公立の保育所長連絡会議等で検討していくこととなると思います。こども支援課では、現在、まず保育士の体制、また施設や器具等の整備について課題と捉えております。


吉田

 保育士の働き方にも正規の職員や会計年度任用職員などいろいろとあると思いますが、令和3年2月定例会で副市長の人事の提案の際に執行部から市の職員の配置の在り方についての答弁があり、令和3年度内に定員の適正化計画を策定する中で、適正あるいは適切な定数の在り方を庁内で議論していくと説明がありました。この議論の中には保育士の配置も含まれているのでしょうか。


企画部長

 御質問の定員の管理計画については、全ての職種における体制について計画に盛り込みたいと考えております。具体的な定員数まで踏み込むかどうかといったところまで検討は進んでいませんが、今後の体制として方針等が明らかになっているものについては定員管理計画の中で考えていきたいと思っております。


吉田

 3歳未満の受入れについてはまだ方針が固まっていないので、恐らく今回は見送られるのではないかと今の答弁から読み取りましたが、適切な人員配置についてはいろいろな機会を捉えて引き続き検討をお願いしたいと思います。
  それでは、最後の質問に移ります。さらなる対象の拡大についてです。
 つい先日の6月11日、医療的ケアを必要とする子供とその家族を支援する、医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律が成立し、これまで努力義務にとどまっていた国や自治体の支援策が責務に格上げされました。自宅で暮らし、人工呼吸器など医療的ケアを必要とするゼロ歳から19歳までの子供は、現在全国に約2万人いるとされています。支援法は、医療的ケア児の日常生活を社会全体で支えるという基本理念を掲げ、医療的ケアを必要としない子供たちとともに教育を受けられるよう最大限に配慮し、行政や民間が緊密に連携するよう求めております。そのために、保育所や学校に対し、看護師などの配置を要請しています。先ほど紹介した仙台市のプラス支援保育は、医療的ケアを必要とする子供も対象としています。本市も、まずは先ほど申し上げた障がい児保育事業の年齢要件の引下げを行い、その後も人材確保の方策なども含めた障がい児保育事業のより一層の拡大に向けて検討を続けていくべきと考えております。
 そこで、小項目4 心身に障害を持つ3歳未満の幼児の集団保育を早期に実現し、従来の要件で受け入れられないケースや医療的ケアを必要とするケースについても対象の拡大を検討すべきと考えますが、市長の御見解をお伺いいたします。


市長

 市内保育施設における障がい児の受入れ数は年々増加傾向にあり、3歳未満児に限らず、3歳以上児においても障がい児保育のニーズは高まってきているものと捉えています。
 心身に障がいを持つ3歳未満の幼児であっても、現状、保育施設に入所することは可能ですが、障害の程度によっては集団保育になじまないとの判断に至る場合もあるため、健常児と比べると入所ハードルが高くなってしまっていることについては課題であると捉えております。
 一方で、重度の障がいを抱える幼児や医療的ケアを必要とする幼児の受入れは、保育現場に負荷が生じるおそれがあることや、そもそも保育士は医療行為を行うことはできないといった課題があるため、現在の保育施設の運営体制等についても併せて整理していかなければならないと捉えております。
 つきましては、これらの課題について整理を行いながら、より多くの心身に障がいを持つ3歳未満の幼児に対し保育サービスを提供できるよう、検討を進めてまいりたいと考えております。


吉田

 保育現場の負荷という話がありましたが、全てのお子さんの安全を確保して、そして集団保育として責任を持って預からなければなりませんので、そのお考えは至極もっともであると思います。
 ただ、その一方で、やはりこれまで受入れができなかったとしても、障害の度合いによっては、施設の整備や人員の増員により受入れが可能になるケースが拡大することはあり得ると思います。仙台市のプラス支援保育については、本市と同様に審議会が設置されて適否が判定されるわけですが、医療的ケアを必要とする保育も含まれていて、本市も要件をもう少し緩和できるのではないかと思うのですが、仙台市でできていることが本市でできない部分があることについてはどのようにお考えでしょうか。


市長

 基本的な考え方としては、共生、共に生きるということで、障害の有無にかかわらず自分らしく生きることができるまちづくりを目指す意味で、今回御質問いただいている内容についても、ぜひ前向きにいろいろと検討を進めていきたいという姿勢を持っております。一方で、障がい児の保育にはより手厚い対応が求められます。加配措置への補助は行っていますが、実際に加配ができるかどうかが課題です。保育士の手配の問題もありますし、待機児童解消のためにもともと定員を超えて受け入れている施設が結構多いこともあって、やはり保育現場の負担が大きくなる。負担が大きくなるというのは、安全性を担保する上で大きな障害になってはいけないということで、そうしたことの両立をしっかりと図っていかなければいけないのではないか。まして、先ほど申し上げたとおり、医療的ケアは保育士は行えず、障がい児の福祉サービスの形になりますので、専門的な知見をお持ちの方をどのように取り入れていくか、また施設そのもののキャパシティーの問題等もありますので、それらどのように整理してどこに落としていくか検討を進めながら、できる限り多くの幼児を受け入れられる体制づくりに努めていきたいと考えております。


吉田

 私は本市の保育事業は非常に一生懸命取り組んでいると、評価しているのです。ただ、その中で、今回の質問に当たりいろいろと調査して知ったのですが、昭和50年、私が生まれる前の年ですが、本市は実は障がい児保育を県内で1番に始めたという非常にすばらしい歴史がありますので、当時を思い出して、もう一度今、進んだ事業を行っていただきたいと思うのです。当時、仙台市の人口は61万5,000人程度、本市は約4万6,700人でやはり人口差は非常にありましたが、それでも仙台市よりもずっと進んだ取組を行っていました。昭和50年というと、副市長がきっと若々しい姿で仕事をしていた頃です。山田市長は12歳のわんぱく少年だったと思います。当時どのような保育事業を行ったのか、広報なとりのバックナンバーに掲載されていましたので、最後に紹介させていただきたいと思います。
 「市で5番目、手倉田保育所 心身障がい児もいっしょ 県内初めて、東北でも珍しい」という見出しで始まる6月15日号の記事です。読み上げます。「名取市5番目の手倉田保育所はこの4月に開所したばかりですが、心身障がい児も一緒に集団保育する画期的な保育所ということで、各方面から関心が寄せられています。集団保育の狙いは、一般の幼児と共に共同生活をさせながら適切な指導を加えていくことによって、健全な社会性の成長発展を促進させるなど、障がい児の福祉増進を高めたいと開設したものです。現在、この種の保育所は東北では珍しいといわれており、もちろん県内では初めての試みという施設ですが、重・軽度合わせて7人の障がい児たちが83人の幼児に交じって砂場や遊具、あるいはお遊戯にと毎日を元気に楽しく過ごしています。国の基準では収容児の1割までとし、軽度の障がい児で保育に欠ける家庭の4歳以上となっていますが、名取市では年齢を3歳に落とすほか、障害の程度も大きく国の基準を上回って取り扱うことにしています。また、全国的に見てもこのような施設を持っている自治体は少なく、大体が30万人を超える大都市がようやくテスト的にやっているものといわれており、名取市の英断と今後の運営について専門家の間からも期待が寄せられています。保育内容は、更科所長以下16人の保母が当たっていますが、症状によって極端に違った行動を起こすこともあり、時にはマン・ツー・マン保育が要求され、一口に集団保育とはいかない面に保母の苦労はあるようです。しかしながら、情操面の社会反応が目に見えて現れてきたと喜ぶお母さん方の感謝の言葉に、保母たちもまた苦労が報いられたと感じと、共にその喜びを分かち合っています」。ここまでが引用です。
 さて、第六次長期総合計画のスローガンとして初期段階に「なとりプライド」と提案されたことがありましたが、私はこの昭和50年の決断こそが本市の歴史において最高に輝かしい誇りの一つだと思います。この後、昭和56年4月から全保育所に範囲を広げて実施されましたが、現在は実施していない施設も一部あるということです。本市の障がい児保育事業を、国の基準を上回って、県内で最も進んでいるという地位に今再び回復させようではありませんか。市長、力強い御答弁をお願いします。


市長

 本市は子育て・教育の先進都市を目指しております。加えて共生社会を目指していく中で、議員から様々御指導いただいた内容も含めて種々検討して、少しでも前に進めていきたいと考えております。


吉田

 迅速な対応をお願いいたしまして、私の一般質問を終わらせていただきます。


本会議

(議案第77号 令和3年度名取市一般会計補正予算)

吉田

  6、7ページの15款1項2目衛生費国庫負担金の2節一般予防費の新型コロナウイルスワクチン接種事業費と、15款2項3目衛生費国庫補助金の4節新型コロナウイルスワクチン接種体制確保事業費を合わせると、歳出の4款1項3目一般予防費の職員人件費と新型コロナウイルス感染症対策事業を合計した額に等しいということです。歳入で2種類の事業費という形で国から来ているのですが、この使い道はどのように分かれていくのか、確認させていただきたいと思います。


新型コロナウイルスワクチン接種対策室長

 まず、国庫負担金の新型コロナウイルスワクチン接種事業費については、国で定めた接種の単価2,277円の1人2回分で、3月末の対象者の人口5万3,900人を掛けたものが積算根拠となっております。それが接種に係る費用ということで、まず措置されているものになります。それを歳出として上回ることが見込まれるものについては、新型コロナウイルスワクチン接種体制確保事業費として国庫補助金で措置されるものになっております。具体的には、会場の設営とか、医師や看護師の確保といった体制の確保には、ほとんどこの補助金が使われるものと捉えているところです。


吉田

 では、実質の注射針でワクチンを打つ部分については、1項の国庫負担金の中で全て賄われていて、対象となる人口の分が、5万三千何人か聞き取れなかったのですが、その部分だと思います。そうすると、これは年齢関係なく、下は何歳からでしたか、16歳以上かな、そこのところも確認させていただきたいのですが、市で行っている集団接種と個別接種だけではなく、職域の接種とか、あるいは大学などでの接種で、今度は、周辺の住民の方とか社員の方とかだんだん広がってきているようですが、その辺で生じてきた差額分は計算をしつつ、最終的に国にお返しすることになっていくのですか。


新型コロナウイルスワクチン接種対策室長

 まず、国庫負担金のほうの対象年齢については、こちらの予算を計上した段階では16歳以上となっておりました。
 それから、最近始まった職域接種については、申請先も宮城県で、お金の流れ等についても市が関わることは今のところ出てきておりません。例えば職域接種などが進んで市が見込んだ経費までかからない場合には、最終的には精算という形になるかと思いますが、今のところ、そこは不明な点が多い状況になっております。


吉田

 10ページ、11ページの21款5項2目雑入、一般財団法人自治総合センターコミュニティ助成金の使い道についてお伺いいたします。


市民協働課長

 こちらの一般財団法人自治総合センターコミュニティ助成金ですが、800万円のうち500万円については一般コミュニティ助成事業です。町内会の行事用品や集会所備品等に対する補助金になっております。


文化・スポーツ課長

 残りの300万円については、令和3年10月3日日曜日に名取市文化会館において開催予定の東日本大震災復興記念事業の復曲能「名取ノ老女」について、一般財団法人自治総合センターが実施するコミュニティ助成事業の地域の芸術環境づくり助成事業に申請して、助成決定を受けたものです。


吉田

 ということは、300万円のほうは財源更正の部分ということですね。そうなりますと、これは負担の割合のような考え方が何かあって、その300万円という金額になっているのですか。この額をどのようにしてその一般財団法人自治総合センターコミュニティ助成金として申請したのか、根拠についてお伺いいたします。


文化・スポーツ課長

 こちらの助成金の積算根拠ということで説明します。こちらの助成対象事業費は、850万円と考えておりました。入場料収入見込みは、定員の65%までの入場者数を見込んで計算した395万3,000円となります。この金額を差引きした額の3分の2が約303万円となりますので、300万円を今回の助成金として雑入に計上させていただいたものです。


吉田

 14、15ページ、2款1項11目公共交通対策費の乗合バス運行業務欠損補助金の算定根拠についてお伺いいたします。


防災安全課長

 乗合バスの運行業務については、平成30年度から5年間の業務委託を契約しており、名取市公共交通計画に基づく乗合バス等運行業務に関する覚書の中で、欠損補助金について取り交わしているところです。その内容については、本市が示した年間収入見込額に満たない場合は、当該収入見込額と収入実績額の差額について、5分の4の範囲を上限に欠損補助を行うものとしております。また、あわせて、障がい者運賃の無料化、割引適用に伴い年間収入見込額に著しい影響が生じた場合に、障がい者割引適用補助として併せて欠損補助金を算出しているところです。
 現在、株式会社桜交通と仙南交通株式会社の2社に業務委託を行っておりますが、令和2年度はコロナ禍の影響で2社とも乗車人数が減少し、それに伴い、株式会社桜交通については年間収入見込額7,100万円に対して実収入額が6,358万2,085円になりまして、その差額741万7,915円が欠損補助対象額となりました。しかしながら、令和2年度はコロナ禍の影響によることから、令和2年7月の臨時会の補正予算においてお認めいただいた国の新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用し、乗合バスの運行支援金として700万円を支援しました。その結果、その差引き分として41万7,915円の欠損額が生じたところです。この欠損額に対して1,000円未満を切り捨てた金額の41万7,000円の覚書で規定している5分の4が欠損補助金となります。その額が33万3,600円となり、これに障がい者割引適用補助金額8万4,000円を合計しまして、株式会社桜交通に対しては41万7,600円の欠損補助金となりました。
 また、仙南交通株式会社については、年間収入見込額が400万円に対し、実収入額が294万7,862円となり、その差額が105万2,138円となりました。こちらについても、乗合バス運行支援金として30万円を支援し、最終的には75万2,138円が欠損額として生じたところです。この欠損額に対して、1,000円未満を切り捨てた金額の75万2,000円の覚書で規定している5分の4が欠損補助金として60万1,600万円と、障がい者割引適用補助金額15万円を合計しまして、仙南交通株式会社に対して75万1,600円の欠損補助金となりました。
 今回、この2社を合わせた金額が116万9,200円となりますが、今回の補正予算では切り上げた117万円を欠損補助金として計上しているところです。


吉田

 26、27ページの10款5項7目文化振興費の財源更正のところです。これは「名取ノ老女」の公演のことだと思いますが、ここは財源更正だけでいいのでしょうか。当初予算の際にあまり具体的な説明がなかったのですが、復興10周年ということで、もう少し復興事業の詳細をこの場でお聞きできればと思いますが、いかがでしょうか。


文化・スポーツ課長

 財源更正の中身と捉えて説明申し上げます。
 こちらの予算については、東日本大震災の復興記念事業についてコミュニティ助成事業助成金の決定を受けたことから財源更正を行うものです。収入増になった分は、先ほど御説明したようにコミュニティ助成事業助成金300万円になります。当初予算では、ふるさと寄附基金繰入金を財源として見込んでおり、それが270万円でした。その分の差額30万円について、一般財源から財源更正するというものです。


吉田

 今回は1日限りということだと思いますが、先ほどの説明だと、恐らく新型コロナウイルス感染症の対策なのか、感染拡大か何かで客席数を100%から下げて六十何%ということで3分の2ぐらいだったと思います。平成二十何年かのときに同じような内容で復曲能の公演をした際に、非常に早くチケットが売り切れて、見ることができなかった方が多かったので、今回、さらに客席数が少ないとなると、見ることができる方の数がまた限られてしまうと思います。例えば、この一般財団法人自治総合センターからの助成金などを使いながらオンラインで中継をするとか、何かそういう使い道が認められるかどうかをお伺いしたいと思います。


文化・スポーツ課長

 今回の「名取ノ老女」の公演の件ですが、入場見込数を65%ということで御説明しましたが、その割合については、一般財団法人自治総合センターから、算出する際にそういう割合で計算するように指導されていて、65%となったものです。現在、コロナ禍が収束しておりませんが、現状では静かに観劇をするということを考えておりますので、見切り席を除いた満席で、席は販売したいと考えております。
 なお、結構好評な公演ですので、今回も売り切れになることが予想されております。今、議員から御提案のあったオンラインでの中継については、これはやはり国立能楽堂等と著作権等いろいろ調整も必要ですし、今すぐできるかどうか分かりませんが、その辺は検討させていただきたいと考えております。


(議会案第3号 東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS等処理水の海洋放出について慎重な対応を求める意見書)

吉田

 10番吉田 良です。ただいま議長から発言のお許しをいただきましたので、議会案第3号 東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS等処理水の海洋放出について慎重な対応を求める意見書の委員会修正案に対する賛成討論を行います。
 処理水の海洋放出によって、地域の生産物に対する風評被害が生じることがあれば、東日本大震災からの復興に向けた関係者の努力に水を差すことになるのではないか、そのことを憂慮する気持ちは私も提出者と同じです。むしろ、原案も修正案も内容には物足りなさがあるというのが私の立場です。以下、その理由を申し上げさせていただきます。
 処理水の海洋放出に対する国際社会の反応と処理水の現状について、メディアはその一部しか取り上げていないと感じられます。国際社会の反応として紹介されるのは、いつもアメリカ、中国、韓国がほとんどです。アメリカは理解を示し、中国、韓国は批判を強めている。中国や韓国は日本の足を引っ張りたいだけだろうし、アメリカやIAEA国際原子力機関がお墨つきを与えているのだから大きな影響はないはずだと、まるで地球上には日本とアメリカと中国と韓国しか存在しないような捉え方で問題を矮小化し、対立の構図に落とし込め、自己正当化する政府に都合のよい見せ方で報道が行われていると感じます。しかし、世界にはほかにもたくさんの国が存在します。太平洋に面した国々に住む人たちは、日本政府のこのたびの方針をどう見ているのか。メディアからは全くといっていいほど情報が流れてきません。
 私の友人に太平洋島嶼国に大変ゆかりの深い方がいます。現在はその方は日本に在住しておりますが、現地の住民との交流をオンラインで頻繁に行っているそうです。その方の話によれば、伝統的に親日的な大洋州の国々では、このたびの海洋放出の方針を聞いて、日本はどうなってしまったのだろうと不信感が高まっているそうです。そのような国々では、中国による経済的な影響力が強まっており、日本はこのままでは大切な友人をなくすことになるだろうと憂慮されております。
 いや、処理水に含まれるトリチウムはほかの国の原子力発電所からも排出されている。日本だけではないから問題はないのだという意見もよく聞かれます。例えば、某週刊誌には、韓国の原子力発電所が2018年、海水や大気に年間約360兆ベクレルのトリチウムを排出した、また、経済産業省のまとめた資料によれば、中国の大亜湾原子力発電所は2002年に約42兆ベクレルを排出したと書かれています。一方で、日本のALPS処理水は年間22兆ベクレル以下で海洋放出する。確かにそこだけ切り取れば、日本のほうが安全性が高いように見えます。
 しかし、二次処理後もALPS処理水に残留する核種は、トリチウム以外にもヨウ素129、セシウム135をはじめ12核種もあります。そのうち11核種は、通常の原発排水には含まれておらず、処理水を通常の原発排水と同様に捉えることはできません。しかもこれらの核種は半減期が非常に長いものが多く、ヨウ素129は約1570万年、セシウム135は約230万年、炭素14は約5700年です。このことは、自民党の山本 拓衆議院議員が指摘しております。山本議員は、医学博士ではなく工学博士が処理水の安全性を主張しても説得力がありませんとまで述べています。
 どんなに微量であっても、自国の都合で発生した核種を自国の都合で垂れ流すのは、国家として責任ある対応とは言えません。処理水は飲んでも何ということはない、あるいは希釈している、飲めるんじゃないですか、普通の話だと記者会見で発言した国務大臣がいますが、実際に飲んだという話はいまだ聞こえておりません。そういう態度も海外の国々の不信感を増幅させているのではないかと思います。
 風評被害による事業者への経済的打撃は避けなければなりませんが、もし補償を行うことで農林水産業者等の理解と合意が得られたとしても、やはり現状の政府方針で自然界へ放出するべきではないと考えます。私が物足りないと申し上げたのはその部分です。意見書の表現は軟らかく感じますが、その趣旨が賛同すべきものであるということは確かであると判断いたします。
 国際社会と未来の世代に対し無責任な行動を取らないよう、政府を国民が制御することの重要性を訴え申し上げまして、賛成の討論を終わります。